アイハウス・プレス・ニュース
アイハウス・プレスは、海外における日本理解の増進を目的として好評を博した日本人による名著および国際文化会館のプログラム活動の成果を、より広く一般に英語で発信する出版事業です。無償配布を終了し、増刷希望の多かった長銀国際ライブラリーの書籍に増補改訂を施し、刊行する事業も行っています。全国の書店でご購入いただけますが、郵送による直接のご購入も承っております。
最新刊
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The New Paradox for Japanese Women:
Greater Choice, Greater Inequality
日本社会はかつて総中流社会と看做されていたが、現在では亀裂が生じている模様であり、貧富の差がますます顕著になっている。しかし、これまでの社会格差研究は男性と家族しか対象としていなかった。著名な経済学者である橘木俊詔氏は、「The New Paradox for Japanese Women: Greater Choice, Greater Inequality」で、日本女性間の社会的分裂に注目している。日本女性は現在、どのような格差に直面しているのか。女性の家族環境、教育、結婚や子供に関する意思決定は、女性の社会的地位を決定する上でどのような役割を果たしているのか。専業主婦と働く女性の間に社会的格差は存在するのか。職場の女性はどうなのか、一般職やパートタイムの女性は総合職の女性と社会的に平等なのか。統計データを踏まえた徹底分析によって、これらの問題に鋭く切り込むとともに、日本がこの拡大する社会的ジレンマに対処していくためのヒントを提供してくれるタイムリーな書。
<本書への推薦文>
1990年代以降の長引く景気後退は、新自由主義的政治改革と相まって、男女間の格差ばかりでなく女性間の格差も強めている。女性は選択の多様性と自由の名の下でエリートと非エリートに二極化している。社会学的機知に富んだ第一級の経済学者である橘木俊詔氏が、ハードな統計データを踏まえ、女性の多様な現実を鮮やかに描き出している。著者の分析は、仕事中毒のビジネスマンと専業主婦という日本の家族神話がもはや通用しないことを証明している。
——上野千鶴子 東京大学教授(社会学者/女性研究の第一人者) 本書に寄せた推薦文より
最新刊
Demystifying Pearl Harbor:
A New Perspective from Japan

- 井口武夫 著
- 2010年/366ページ/ハードカバー
- ISBN 978-4-903452-19-7
- 原著:井口武夫著『開戦神話』(中央公論新社、2008年刊)を英語読者向けに改訂、増補、改編等をほどこした決定版
- 3,000円(2,858円+税)
日本はなぜ米英との破滅的な戦争に走ったのか。なぜ通告は遅れ、日本は宣戦布告なしに真珠湾を攻撃したと米国から非難されることになったのか。
この画期的な著書で、元外交官の井口武夫氏は外交の失敗に注目し、日本の対米最終覚書とワシントンの日本大使館、ひいては米国務省への伝達の遅れを徹底検証している。著者によれば、軍部(と恐らく外務省)の人間が共謀し、真珠湾と東南アジアへの奇襲攻撃を悟られないよう、外務省からのワシントンへの打電を遅らせるとともに、ルーズベルト大統領から天皇へのギリギリの段階での親電に対応する必要があったことも打電の遅れにつながった。日本の敗戦後、極東国際軍事裁判(東京裁判)に直面すると、個人的な責任を回避したり、上官を守ったりするために、この共謀は隠蔽された。こうして、責任問題の全体が沈黙と矛盾する証言の迷宮に取り残された。
戦後の陰謀史観は、日本が戦争に踏み切ったのはルーズベルトが日本を挑発したためであるとし、東京裁判の「勝者の正義」を疑問視した。また、交渉打ち切りの通告が遅れた責任はワシントンの日本大使館にあるとされた。著者は、こうした神話は政治的には好都合で、心理的には慰めとなるかもしれないが、「勝者の歴史」や「敗者の歴史」を越えて公明正大な歴史的真実を明らかにすることが−自国と外国の、自身にとっても将来の世代にとっても−極めて重要である、と信じている。
<本書への推薦文>
本書は日本の真珠湾攻撃研究に対する極めて貴重な貢献である。著者は他の誰にもない3つの特質を兼ね備えている。第1に、1941年12月7日、父親が日本大使館に勤務していた関係でワシントンDCにいた。特権的な外国人から蔑むべき敵性外国人への転落という屈辱的な経験をした著者は、日米戦争は避けられた悲劇であったと個人的に固く信じている。第2に、著者自身、後に外交官となり、本省と在外公館の官僚主義を身をもって体験している。第3に、著者は国際法の専門家でもあり、外務省退職後、長年に亘り国際法の著作を発表したり、教鞭をとったりしている。したがって、最終的に真珠湾攻撃につながった日米論争の法的側面を評価することができる。これらの特質に加えて、日米の公文書に関する長年に亘る自身の研究や真珠湾をめぐるドラマに直接間接に関与した役人や軍人へのインタビューも行っている。その結果、本書は最新の、信頼性の高い、説得力のある歴史書となっている。
——入江昭(ハーバード大学) 本書に寄せた序文より
<ジャパン・タイムズ社説から>
井口武夫氏は、軍の圧力の下で、日本外務省は適切な最後通牒を撤回し、代わりに交渉打ち切りを米国に通告する決定を下しただけでなく、ワシントンの日本大使館への打電も攻撃まで15時間遅らせた、と述べている。著者は、外務省が野村吉三郎大使を攻撃計画の蚊帳の外に置いたと説得的に論じている。
——『ジャパン・タイムズ』2008年12月8日社説
2009年刊、好評発売中
国際文化会館:東西文化の架け橋を目指して
国際文化会館の文化交流・知的協力の歴史を、その創設から今日まで概観することを目的とした写真集である。約300点の写真で構成され、東西間の文化的差異を超えた対話の重要な場面を時系列に紹介することで、知的交流を通じて国際相互理解の増進をはかってきた会館の先駆的役割を明らかにする。補遺のエッセーには、ジョン・D・ ロックフェラー3世と松本重治の出会い、そして国際関係における文化の側面がもつ重要性に対し共通認識をもっていた2人の間に培われた友情から、国際文化会館が設立されるまでの経緯が綴られている。民間のイニシアティヴによる、国籍、職業、分野等のさまざまな境界を超えた文化の架け橋がもつ今日的意義を浮き彫りにする。
リーダーシップと国際性
「資源のないわが国が人材をもっと大事にしないならば、いったい何を大事にするのか」
「文化力を競い合う21世紀の世界において、日本はどのような役割を果たしていくのか」
「今の日本人は、幕末の人間が持っていたインテグリティーをなくしてしまったのではないか」
本書は、2008年に開校した第一期「新渡戸国際塾」(主催:国際文化会館)の講義録である。「新渡戸国際塾」は、日本ならびに日本人の国際的な存在感が希薄になっている現状に鑑み、次世代を担うリーダー育成のために開校された。第一期の講師陣は、明石康(元国連事務次長)、青木保(文化庁長官)、鶴見俊輔(哲学者)、船橋洋一(朝日新聞社主筆)、大島賢三(JICA副理事長)をはじめ、国内外の国際的な現場で先駆的な役割を果たしてきた10名。
冒頭は、10名の講師たちが、「新渡戸国際塾」に集った15名の塾生にぶつけた質問であり、問題提起である。これらの問いかけにあなたならどう答える? 未来を拓くリーダー、必読の書!
本書への推薦文
新渡戸稲造ほど国際社会に通用する日本人の資質を求めた人は稀であろう。太平洋問題調査会(IPR)は、彼にとって世界と日本を架橋する場の一つであった。その希望はあの戦争によって無惨に打ち砕かれた。が、戦前のIPRで同席した松本重治とロックフェラー III 世が廃墟の東京で再会し、アイハウスを建てた。今、そこに新渡戸塾が生まれ、国際派にゆりかごを提供せんとしている。今後の時代を導くことを願ってやまない。
五百旗頭真(防衛大学校長)
The Edo Inheritance

- 徳川恒孝 著
- First English edition/2009年/212 ページ/ハードカバー
- ISBN 978-4-903452-14-2
- 原著:『江戸の遺伝子』(PHP 研究所、2007年刊)
- 2,500円 (2,381円+税)
「江戸の遺伝子」とは何か。日本では、江戸時代は幕府の鎖国政策で世界から絶望的に立ち遅れてしまった暗黒時代との見方が多い。しかし、著者の徳川恒孝によれば、それどころか、徳川時代の日本は永きに渡る泰平と広範に行き渡った繁栄の下、多くの点で他の国々より進んでいた。
100年に及ぶ内乱の無秩序状態を経て、3人の歴史上の偉人が1603年から1868年まで265年もの間続いた徳川の平和(パクストクガワ)の礎を築いた。中世の遺物を破壊した織田信長、天下を統一した豊臣秀吉、そして泰平の世を打ち立てた初代将軍徳川家康である。徳川幕府の下、治水管理でコメの収穫量は増加し、武士は有能で高潔な役人へと姿を変え、読み書き能力は全国へと普及した。18世紀の日本は世界で最も都市化され、当時最も洗練された文化を誇った。
徳川宗家第18代当主の著者は独自の視点に立ち、徳川時代を再評価する時期は十分に熟していると指摘する。実際、この急速なグローバル化と不確実性の時代に、徳川300年の泰平の世で培われた強固な文化的価値――平等主義、多くを地方自治に委ねる小さな政府、宗教的寛容、自然との共生――から世界は大いに学ぶことができる。
本書への推薦文
徳川時代(1603〜1868年)――この間の日本を効果的に支配した徳川家による支配の時代――は、265年に及ぶ泰平の世を誇るべき時代なのか、それとも3世紀に渡る警察国家を作り上げた非難すべき時代なのか。本書で徳川宗家第18代当主は、時に日本の暗黒時代とも言われるこの時代を脱「悪魔化」する修正主義的な歴史観に立ち、現代の先駆けとなる時代を発見する。各方面で論議必至の注目すべき著作。
ドナルド・リチー
2008年刊、好評発売中
Japan in Trade Isolation, 1926-37 and 1948-85
1920年代と30年代の世界経済は、通貨制度が変更され、保護貿易主義が台頭し、大恐慌に見舞われた動乱の時代であった。世界舞台に初めて非西欧の発展途上国としてのし上がった日本は、ダンピング課税に見舞われ、世界貿易から孤立し、通商規制と差別の対象となった。第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期、日本が貿易を通じて経済的に世界中から追い詰められていった経験は、グローバリゼーションの反動として新たに保護主義の台頭する現代においてどのような教訓をもたらすのか? 戦間期の世界市場を舞台に日本という一つの国を焦点として、保護主義と貿易差別をあつかったこの革新的な研究は、今まで日本でも外国でも、また世界史の中でもはじめて解明されるものである。
1944年、国際貿易のルールを管理するガット(GATT)が創設された。戦前の保護主義とブロック化の苦い体験を再び繰り返さないとの願いが、ガット誕生の所以である。日本は1955年にようやく加盟できたが、第35条による差別が続くなど、その道は決して平坦ではなかった。著者はガットの経済分析官としての経験から、世界経済の発展は、先人たちの努力に負うところが大であることを検証し、さらにガット設立当時の偉大な人びとの英知を超えてすすみ、ガットからWTOへとより強い世界貿易機関に引き継がれて発展してきたことを検証している。今また保護主義の台頭が懸念される中で、本書におさめられたかつての日本の悲劇を現代の英知を集めて検証することにより、人間は未来へとさらなる発展を遂げ得ると構想している。
Learning for Life―The Kumon Way

- 木下玲子 著
- First English edition/2008年/250ページ/ハードカバー
- ISBN 978-4-903452-13-5
- 原著:『寺子屋グローバリゼーション』(岩波書店、2006年刊)
- 3,000円(2,858円+税)
グローバル化と技術革命を背景に誰もが仕事でも生活でも新たなスキルを学び続けざるを得ない「新学習社会」が生まれる中、教育は世界中で圧力にさらされている。本書で、ジャーナリストの木下玲子は日本の公文式学習法がこうした環境の変化を受けて静かに世界中に広がっている姿をレポートする。
今や世界45カ国の400万人以上の生徒に学ばれている公文式の秘密は何か。公文式は教師の公文公が息子用に作成した算数教材から発展したが、木下によれば公文式のルーツは江戸時代に庶民の子供が読み・書き・そろばんを身につけた寺子屋の自学自習にある。公文の生徒は自分に合ったペースで新たなスキルを学習するが、自信と自立性も身につける。
しかし、公文式が世界中に広がった真の秘密は、学習に国境はなく、人はさらに上を目指すことで成長し続けるという公文公の信念にあるのかもしれない。
寺子屋の精神を継承する日本の市民社会から生まれた公文式学習法という教育サービスが、混迷する世界各地の教育現場で、どのように受け入れられ、また、どのような社会的影響や変化をもたらしたかを、徹底的な取材をもとに興味深く描いている。
本書への推薦文
「鋭い視点を持つ日本屈指のジャーナリスト、木下玲子が公文式成功の秘密を探り17カ国を取材、教育界の魅力あふれるパイオニアの人物像と学習を楽しく実りあるものにしたその功績を描き出している。」
ハーバード大学教授: Soft Power の著者
Joseph S. Nye, Jr.
Escape from Impasse: The Decision to Open Japan

- 三谷 博 著(David Noble訳)
- 増補改訂版/2008年/388ページ/ハードカバー
- ISBN 978-4-903452-06-7
- 原著『ペリー来航』(吉川弘文館/2003年)
- 3,000円(本体2,858+税)
ペリー率いる黒船の来航により、開国を迫られた幕末日本。緊迫した東アジア情勢の中、徳川公儀は、いったんは鎖国に迷い込みながら、そこからの脱却を果たした。陰謀や権力闘争など外交政策の舞台裏を、まるでミステリー小説のように解き明かす日本開国史の決定版。
本書「はしがき」より
19世紀の半ば、日本は200年あまりの鎖国を解いて、西洋諸国と国交と貿易を始め、さらに従来から関係のあった中国・朝鮮など近隣の諸国とも、西洋の国際法を基礎として、対等で密接な関係を持つようになった。この本は、この開国と呼ばれている過程について概説し、さらにそこに含まれていた人類史に普遍的な問題について考える手がかりを与えようとするものである。日本人が西洋との関係を意識し始めたのは、ペリーの来航する60年も前であった。将来、世界制覇を続けている西洋が日本にも危機をもたらすのではないかと予想し、鎖国を強化するために海防と避戦を柱とする政策を立案していた。……その後、イギリスは大軍を隣国清に送ってこれを打ち負かした。西洋の支配を免れていた東アジア・北太平洋地域は、西洋の支配に怯えることとなったのである。……しかしながら、他の国々と違って、日本が近代史の中で唯一、他国の支配を免れることができたのは、予め、こうした予測を立て、対応のシナリオをある程度は用意していたからであった。
本書への推薦文
「明治維新の外交前史を詳論した明快で洞察力に満ちた労作。1853年まで日本の「事情通」の「圧倒的多数」は鎖国政策を支持していたが、西洋諸国は開国を迫っていた。破滅的な戦争に発展する現実的な可能性があった。だが、日本の指導層は危険を察知し、政策を変更、「間一髪で」破滅を回避した。本書はまず日本の伝統的な対外政策と世界観、アヘン戦争とそれが国内にもたらした論争、日本との衝突に突き進んでいた西洋の思惑などに目を向ける。次に、1953〜56年の日本の対外関係を、単にペリー提督とタウンゼント・ハリスの物語としてではなく、ペリー来航、1853・54年の対露交渉、ペリー再来航、1854年の日米和親条約、翌年の英露両国との条約などを通じた日本の対外関係思考の着実な発展として論じる。政策決定の背後にある思想を深く掘り下げ、日米和親条約の日本版と米国版の異同についての分析は際立っている。まさに必読書である。」
ハーバード大学ハーバード・イェンチン研究所歴史学教授
アルバート・M・クレイグ(Albert M. Craig)
Japan’s Lost Decade

- 吉川 洋 著(Charles H. Stewart訳)
- 増補改訂版/2008年/268ページ/ハードカバー
- ISBN 978-4-903452-12-8
- 原著『転換期の日本経済』(岩波書店、1999年) 第1回吉野作造賞
- 3,000円(本体2,858+税)
不良債権の処理が進まぬまま円安、株安が進行し、金融恐慌の危機に見舞われた1990年代の日本経済の状況を徹底的に検証。不況の真因が拙劣な経済政策にあることを明らかにする。その上で、ビッグバンに突入する金融システム、金融行政について明確な指針を提示し、経済立て直しのための方策を処方。あるべき経済政策の姿を提言する。
本書の初版は2001年であるが、著者の吉川洋教授は、2000年末に内閣府の経済財政諮問会議議員に任命され、2001年から2006年まで小泉政権のもとで民間議員を務めた。その間、日本のマクロ経済政策の策定に深く携わり、デフレーション、不良債権、ゼロ金利、赤字国債等、数々の経済的難題に直面し、「失われた十年」の後半とその終息を民間議員として間近に見届けた。この体験から、2008年の時点から「日本の失われた十年」を再度検証し、新たに第八章を追加し、さらに全編にわたって改訂を施し新版としたものである。
本書序文で著者は、「私は自らの経験から主流のミクロ的基礎を持つマクロ経済学があまり役に立たないことを確信した。例えば、第八章で、大量のマネーサプライによるインフレターゲティングがなぜ『不確実性の罠』に嵌った経済状況下では多くのエコノミストが期待しているほど有効ではないかを説明した」と述べている。日本の失われた十年は、歴史的事件であり、多くの未解決の問題を残し、今なお多くのエコノミストにとっての課題である。著者は、本書がエコノミストばかりでなく、さまざまな分野の読者に、日本経済の過去と将来に対する興味を喚起するものとなることを願っている。
本書への推薦文
「日本の失われた10年とその克服策を分析した吉川教授の労作は急速に古典になりつつある。分析で用いられている主なコンセプトは著者のいう「不確実性の罠」である。停滞を克服するにはさらに「需要創出型イノベーション」という新コンセプトも必要とされる。2008年2月9日付ニューヨーク・タイムズ紙掲載の「1990年代の日本の低迷から米国が学ぶべき教訓」と題する記事によれば、サブプライムローン問題を引き金とする現在の米国経済混迷は1990年代に日本を悩ませた「日本病」(ないし軽症の「日本病」)と似ている。米国経済が現在必要としているのは、自らが嵌り込んだ不確実性の罠から脱却する需要創出型イノベーションのパワーである。その意味で、本書は各国の経済専門家に「日本病」克服への見事な処方箋を提供してくれる。」
ニューヨーク大学C.V. Starr経済学名誉教授
佐藤隆三
MARUYAMA MASAO
and the Fate of Liberalism in Twentieth-Century Japan

- 苅部 直 著(David Noble訳)
- 222ページ/2008年/ハードカバー
- ISBN 978-4-903452-10-4
- 原著『丸山眞男 ― リベラリストの肖像』(岩波書店、2006年)
- 2,500円(本体2,381+税)
丸山眞男(1914―96)は、20世紀日本の知識人の典型と見なされてきた。丸山の学術的成果は思想史や政治学の分野に多大な影響を及ぼし、さらに戦後の主要な論壇誌紙への広範な執筆や論評を通じて、リベラリズムや民主主義の率直な主唱者として広く知られるようになった。
この評伝風思想案内において、苅部直は丸山の戦前から戦争期にかけての子ども時代から青年期への歩みをたどり――民主主義の理想への傾倒を深めるとともに、個人の自立と誠実さへの希求への動機づけとなったいくつもの核となる体験を活き活きと描き出している。これは、大衆社会に内在する問題への丸山の戦後の取り組みへの姿勢を示し、日本の伝統をその病理学面から分析し再解釈するためにそこに内在する現代性への道を探りつづけた丸山の思考の透視図である。
丸山の人生と思想の重要性を近代日本の経験に照らして論証するものの、本書は偉大な人物の理想的な肖像を描いたものではない。丸山の政治的行動における二律背反は、ネオ右翼や過激な学生左翼の双方からの攻撃にさらされ、孤独のうちに健康を損ない、東京大学の教授職を含む公的人生から引退した晩年の丸山の悲哀をも描き出している。
著者は本書序章のなかで「丸山が時代の変転の中で、さまざまな問題を見いだし、それに応答してきた姿を動的にたどることが、いま、その作品から何かを読みとろうとする際に、実り豊かなやりかたなのではないか。丸山は、生涯を通じて、時々の「現代」における問題を考え、ひとつひとつ論じてきた。大事なのはその思考の運動であり、それこそが、丸山の思想を生きたものにしている。」と述べている。著者の言葉をかみしめながら本書を読み進むと、「現代の日本で、リベラリズムは可能なのか?」という著者の問いかけが、執拗低音のように行間から響いてくる。
Doing It Our Way: A Sony Memoir

- 大賀 典雄 著(Brian Miller訳)
- 144ページ/2008年/ハードカバー
- ISBN 978-4-903452-11-1
- 原著『SONY の旋律』(日本経済新聞社、2003年)
- 2,000円(本体1,905+税)
「SONY の四文字のブランド価値を一層高めていきたい」、これは著者が1982年に社長に就任し、社長交代会見に臨んで記者団に答えたことだった。ブランドやデザインの重要性に着目、ソニーらしさを製品に盛り込みイメージを向上させることに心血を注ぐ一方、ハリウッドの名門を買収、ハードとソフト両面から経営規模の拡大をめざした50年にわたる「ソニー人生」が綴られている。
ソニーの前身の東京通信工業時代に、新しく開発した小型トランジスタラジオを盛田さんがアメリカに売りに行った際、「SONY のブランドでは売れないから、我々のブランドに変えてくれれば十万台の注文を出す」という話があったが、盛田さんはその依頼を断った。盛田さんはその時、「SONYを将来、絶対、有名なブランドにしてみせる」とタンカを切ったそうで、この話はソニーのブランドに対する考え方の原点になっている。……
企業が発展していくためには、そこで働く社員が満足して仕事を遂行出来なければならない。ソニーは盛田さんの時代から「学歴無用論」や「グローバル・ローカライゼーション」といったスローガンを掲げ、柔軟な人事政策をとってきた。おかげで転職組の社員や外国人社員、それに若手社員でも優秀で能力さえあれば、社内で重要なポジションに採用されることになっている。日本に大企業病が蔓延するなか、ソニーが創業時のベンチャー精神をまがりなりにも持ち続けてこられたのはそうした企業文化が大きく貢献している。……
私にはもう一つ別の人生を歩む道があった。「バリトン歌手・大賀典雄」としての人生である。そのためにドイツにも留学したが、井深さん、盛田さんの熱心な勧誘にあい、経営者としての道を歩むことになった。盛田さんは「二足のわらじという言葉もあるじゃないか」と言われたが、二足どころか、ソニーという一足をしっかり履くだけでも東奔西走の毎日を送ることになった。しかし後悔はしていない。むしろ経営者しての自分の能力を開花させて下さったお二人に今は本当に感謝している。……
ソニーも創業以来、拡大の一途をたどってきたが、企業にも寿命があると言われるように、この先も成長を続けられるかどうかは今の経営陣と社員の肩に掛かっている。その意味でも私のこれまでの道程をここに記し、引き継ぐべきものは引き継ぎ、超えるべきものは超えていって欲しいと願っている。
――序章より
Contradictions of Globalization
―Democracy, Culture, and Public Sphere―
2006年国際文化会館のリニューアル・オープンを記念して企画された国際会議に提出された論考を収めた論文集。相互依存性、多国籍企業の形成またはグローバルとナショナル(ローカル)との対峙などの視点のみからグローバリゼーションを把える通念に疑問を投げかけながら、その内在する二面性としての矛盾・逆説を政治・文化的側面から照射し論じています。国境という垣根が低くなったように感じられる一方で、「格差」・不均衡の拡大やアイデンティティ・ポリティックスの噴出に例証されるように、従来の境界とは違う、新たな境界線で寸断された世界が台頭しつつある状況をどのように考えるべきだろうか。経済のグローバル化とアイデンティティの根拠としての文化の再発見という、ベクトルの異なる現象(外への拡散と内への収斂)が同時進展する逆説的な状況をどう捉えるべきだろうか。ボーダーレス時代におけるこうした領域を超えた重層的課題に対し、パブリック(公共性)と関連させた形で、知識人の役割、メディア/ジャーナリズムのあり方、学術・文化交流の方向性や国境・分野を超えたネットワーキングの意義を、アジア、米国、オーストラリアの傑出した論客(研究者、ジャーナリスト、NPO/NGOのオフィサー)が検証し、問題提起しています。
- 論文寄稿者:
- クリフォード・チャニン、「レガシー・プロジェクト」代表
- ジェイムス・ファローズ、『ジ・アトランティック・マンスリー』記者
- G・ジョン・アイケンベリー、プリンストン大学教授
- イグナス・クレデン、インドネシア民主主義普及協会会長
- メアリー・B・マクドネル、米国社会科学研究評議会 (SSRC) 専務理事
- マズナ・モハマッド、シンガポール国立大学客員シニア・フェロー
- テッサ・モリス=スズキ、オーストラリア国立大学太平洋アジア研究所教授
- パラグミ・サイナート、インド・『ヒンドゥー』紙農村問題専門エディター
- サスキア・サッセン、コロンビア大学教授、LSE客員教授
グローバリゼーションの相異なる二つの側面がアジアのみならず世界各国 で顕著になりつつある現実を領域横断的に検証した画期的な知的・文化ダイ アローグの成果。
――東京大学教授 姜尚中
2007年刊、好評発売中
Japan and Its Worlds:
Marius B. Jansen and the Internationalization of Japanese Studies

- Martin Collcutt, 加藤幹雄, Ronald Toby 編集
- 312ページ/2007年/ハードカバー
- ISBN 978-4-903452-08-1
- 3,000円(本体2,858円+税)
- 国際文化会館が主催した「ジャンセン教授追悼会議」(2001年)で発表された論文とジャンセン教授の人と業績に焦点を当てた論文集
外国人による日本研究の古典的名著『坂本竜馬と明治維新』の著者として知られるマリウス・ジャンセン(プリンストン大学名誉教授)は、2000年12月に没した。ジャンセン教授のもう一冊の名著The Making of Modern Japanが刊行された直後であった。ジャンセン教授の業績は、日本や米国はもとより、ヨーロッパやアジアにおいても高く評価され、その温厚な人柄とともに、広く世界の歴史研究者の敬愛を集めていた大きな存在であった。日本の歴史を世界の歴史経験というグローバルな枠組みの中に当てはめてその関連性を求め、位置づけを試みる比較史学の手法を日本史研究に導入する先駆者的役割を果たした。
この本は、ジャンセンを敬愛した旧友や教え子などによる論文やエッセー――その多くはジャンセン追悼記念シンポジウム(2001年)で発表されものである――を収録したものであり、それぞれがジャンセン的歴史研究アプローチに焦点を当てている。すなわち、4編は、徳川封建社会が短期間で近代産業社会へ急速に移行した日本近代化に対する歴史解釈枠組みの変化に焦点を当て、2編は歴史におけるローカルとナショナルの関係、すなわち地方史を全国史の中にどう位置づけるかをめぐる問題について、そして残りは日本とさまざまな外部世界との錯綜した相互作用関係に光を当てている。これらすべての論文やエッセーは、ジャンセン教授の研究者、教育者としての暖かい人間性、独特のユーモア、部分の精緻な観察と分析から全体の輪郭をたくみに描き出す卓越した能力と文学性さえ感じさせる表現スタイルなどに対する深い憧憬に満ちている。ジャンセン教授は、国際文化会館創設にかかわった人々(高木八尺、松本重治ら)とほぼ半世紀におよぶ密接な関係があった。その交流を通じて比較史学観が深化していく足跡をたどりながら、国際文化会館設立の時代背景とその初期活動を丹念に振り返ったエッセーも巻末に収録されている。
The Meiji Constitution:
The Japanese Experience of the West and the Shaping of the Modern State

- 瀧井一博 著(David Noble訳)
- 2007年/180ページ/ペーパーバック
- ISBN 978-4-903452-04-3
- 原著:『文明史のなかの明治憲法:この国のかたちと西洋体験』(講談社/2003年)
- 第4回大佛次郎論壇賞/第2回角川財団学芸賞受賞
- 2,000円(本体1,905円+税)
日本の内外で識者から迎え入れられた明治憲法。ウエスタンインパクトとナショナリズムの19世紀、木戸孝允、大久保利通、伊藤博文、山県有朋らが西洋体験をもとに描いた「この国のかたち」とは…。日本型立憲国家が誕生するまでのドラマを描く。憲法論議が高まり、「国のかたち」があらためて問われているなか、本書の登場人物の思想や行動から学ぶべきことは多い。
Competing to Be Really, Really Good:
The Behind-the-Scenes Drama of Capability-Building Competition in the Automobile Industry

- 藤本隆宏 著(Brian Miller訳)
- 2007年/167ページ/ペーパーバック
- ISBN 978-4-903452-05-0
- 原著:『能力構築競争:日本の自動車産業はなぜ強いのか』(中央公論新社/2003年)
- 2,000円(本体1,905円+税)
日本の自動車産業は、品質、シェアともに現在も世界トップレベルにあり、カンバン方式、TQCなどの日本発の生産システムがグローバルスタンダードとなっている。その強さの秘密は、生産・開発現場で総合的な実力を競い合う「能力構築競争」にある。著者は1980年代後半にハーバード大学で自動車産業に関する国際比較の調査研究に携わって以来、20年以上にわたって、日本の自動車産業の現場を調査し続けてきた。自動車産業のみならず、あらゆる「モノづくり」産業における能力構築競争に貴重な示唆を与えてくれる。
2006年刊、好評発売中
A Nagging Sense of Job Insecurity:
The New Reality Facing Japanese Youth

- 玄田有史 著(Jean Connell Hoff訳)
- 2006年/218ページ/ペーパーバック
- ISBN 4-903452-00-X
- 原著:『仕事のなかの曖昧な不安:揺れる若年の現在』(中央公論新社/2001年)
- 第24回サントリー学芸賞/第45回日経・経済図書文化賞
- 1,400円(本体1,334円+税)
フリーターやパラサイト・シングルが増えているのは、若者の働く意識が弱まっているのではなく、働きがいのある就業社会に恵まれないからである。フリーターより深刻なのは過剰に働く若者の存在である。若年層を取り巻く現代日本の問題の本質を豊富なデータを示しながら解き明かし、こうした状況を打開するには何が必要かを経済学の視点からわかりやすく解説。若年層への温かなまなざしにあふれた書。
Kabuki: Baroque Fusion of the Arts

- 河竹登志夫 著(Frank Hoff・Jean Connell Hoff訳)
- 2006年/388ページ/ペーパーバック
- ISBN 4-903452-01-8
- 原著:『歌舞伎』(東京大学出版会/2001年)
- 2,000円(本体1,905円+税)
過剰、逸脱、官能。歌舞伎はバロックだ。幕末・明治の歌舞伎作者、河竹黙阿弥の曾孫であり、演劇学の第一人者が、外国の演劇との比較を交えつつ、世界のカブキの魅力を縦横に綴る。豊富な実例や新事実、エピソードを盛り込み、写真や挿図も多数収録。
The Japanese House: In Space, Memory, and Language

- 中川 武 著(Geraldine Harcourt訳)
- 2006年/282ページ/ペーパーバック
- ISBN 4-903452-02-6
- 原著:『日本の家:空間・記憶・言葉』(TOTO出版/2002年)
- 2,000円(本体1,905円+税)
「私がこの本を通して、読者に伝えたいと願うのは、失われた日本の伝統美に対して、ただ懐かしさに駆られて振り返ることだけではない。(中略)暮らし方や、住まいや、生活環境は、自然との関係が濃密なものであり、日本では、ゆっくりとまるで昔からそこにあったように変化した。人々の知恵が住まいの上に豊かに注がれていた一番の理由はそこにあった。(中略)私たちはかけがえのないものを失ってしまった。失ったものの本当の意味をしっかり見届けておきたい。そうすれば何かの形で、好きなもの、大事なものを、これからの住まいに引き継ぐことが出来るかもしれない」(英語版への序より)
Shrinking-Population Economics: Lessons from Japan

- 松谷明彦 著(Brian Miller訳)
- 2006年/214ページ/ペーパーバック
- ISBN 4-903452-03-4
- 原著:『「人口減少経済」の新しい公式』(日本経済新聞社/2004年)
- 1,500円(本体1,429円+税)
「人口減少社会」のあり方を研究する著者は、今後、仮に出生率が向上することがあったとしても、人口減少、とくに労働人口の大幅な減少は避けられないと指摘する。しかし、この傾向は、「経済規模の割には貧しい国民生活」という日本が抱えてきた根本問題を解決する好機であると言う。人口増加のエネルギーを失った日本が向かう先は? 個人の生活から企業経営、政策まで、縮む世界の発想と行動様式を示す。
近刊のお知らせ
既刊「長銀国際ライブラリー叢書」ご案内
アイハウスプレスでは、「長銀国際ライブラリー叢書」として無償配布された下記8タイトルの販売も行っております(いずれもハードカバー)。購入方法については、このページの下部をご覧ください。
Lectures on Modern Japanese Economic History 1926-1994
中村隆英著 原著:『昭和経済史』(岩波書店/1985年)
1994年/336ページ/3,465円(本体3,300円+税) ISBN 4-924971-00-6
Beyond the Full-Set Industrial Structure: Japanese Industry in
the New Age of East Asia
関 満博著 原著:『フルセット型産業構造を超えて:東アジア新時代のなかの日本産業』(中央公論社/1993年)
1994年/172ページ/2,039円(本体1,942円+税) ISBN 4-924971-01-4
The Economics of Work in Japan
小池和男著 原著:『仕事の経済学』(東洋経済新報社/1991年)
1995年/304ページ/3,058円(本体2,913円+税) ISBN 4-924971-02-2
The Japanese Market Economy System: Its Strengths and Weaknesses
鶴 光太郎著 原著:『日本的市場経済システム:強みと弱みの検証』(講談社/1994年)
1995年/166ページ/2,039円(本体1,942円+税) ISBN 4-924971-03-0
Shaping the Future of Japanese Management
土屋守章・許斐義信共著 原著:『これからの日本的経営』(日本放送出版協会/1995年)
1997年/264ページ/3,150円(本体3,000円+税) ISBN 4-924971-04-9
The Japanese Family System in Transition
落合恵美子著 原著:『21世紀家族へ』(有斐閣/1994年)
1997年/210ページ/3,150円(本体3,000円+税) ISBN 4-924971-06-5
The Economics of Development Assistance: Japan's ODA in a Symbiotic
World
西垣 昭・下村恭民共著 原著:『開発援助の経済学』(有斐閣/1997年)
1999年/332ページ/3,150円(本体3,000円+税) ISBN 4-924971-05-7
The Postwar Conservative View of Asia: How the Political Right
Has Delayed Japan's Coming to Terms with its History of Aggression in
Asia
若宮啓文著 原著:『戦後保守のアジア観』(朝日新聞社/1995年)
1999年/382ページ/3,150円(本体3,000円+税) ISBN 4-924971-07-3
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