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【IHJアーティスト・フォーラム / 試写会&トーク】 2014年の陸前高田 ―ミナ・T・ソンのドキュメンタリー映画


  • 2014年9月18日(木)7:00 pm 国際文化会館 講堂
  • スピーカー: ミナ・T・ソン (映画監督/日米芸術家交換プログラムフェロー)
  • コメンテーター: クリストフ・トゥニ (日本の都市文化、文学、メディア研究、環境批評/東京大学教養学部グローバルコミュニケーション研究センター特任講師)
  • 用語: 英語/日本語 (逐次通訳、英語字幕付き)
  • 共催: 日米友好基金
  • 会費: 無料 (要予約・定員70名)
  • ⋆ワーク・イン・プログレス試写会として、編集中の『RIKUZENTAKATA』を上映いたします。
写真提供:ミナ・T・ソン
 
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東日本大震災から3年、長編ドキュメンタリー『RIKUZENTAKATA』には、未曽有の大津波にみまわれた地域に暮らす人々の、それぞれの物語が紡がれています。自然災害そして人為的に引き起こされる災害が頻発する現代においては、世界中の被災者が「移住すべきか、復興すべきか」という悩みに直面させられます。人口変動、環境変化、そして地盤そのものが揺れ動く時代にあって、「家」とはいかなる意味を持つのでしょうか。
十年前、陸前高田に暮らしたソン氏が、震災後初めて岩手に戻り、この地に留まり地域再建を選んだ人々の姿を追います。

写真提供:ミナ・T・ソン
Photo: RIKUZENTAKATA

上映の後には、コメンテーターとして、日本の都市文化、文学、メディアと環境批評を研究し、ポスト3.11の文学や映像作品に詳しいクリストフ・トゥニ氏を迎えて、『RIKUZENTAKATA』の製作過程や、撮影後の感想などについてもお聞きします。


プログラム・レポート

韓国系米国人の映画監督ミナ・T・ソン氏による長編ドキュメンタリー『Rikuzentakata』のワーク・イン・プログレス試写会が行われた。ソン氏は10年前にJETプログラムの語学指導者として来日し、2年間岩手県陸前高田市で暮らした。大学卒業後初の仕事で思い出深く、いつかまた必ず戻って来ると決心して帰国したが、2011年の東日本大震災を機に、その決意には全く異なる意味が加わった。アメリカの友人たちは誰も岩手県を知らず、ゆえにソン氏にとって陸前高田は自分だけの特別な場所だったが、壊滅的な被害の映像が世界中に流され、街の名前は震災とともに記憶されるようになった。ちょうど大学院でドキュメンタリー映画を勉強しているところで、自分が陸前高田の映画を撮るなら、この場所の素晴らしさをたくさん盛り込もうと決めたそうだ。こうしてソン氏は今年6月に来日し、以来3カ月間陸前高田に住みこみ、住民の日常に寄り添いながら撮影を続けてきた。

映画には陸前高田に暮らす3名の人物が登場する。震災で助けられた経験から人助けに目覚め、現在は海外にまでボランティアに出かける元不良青年のタカ。跡継ぎの息子を亡くし、店も流されてしまった畳職人のジュンイチ。都内で暮らしていたが、震災を機に陸前高田に戻ってきた20代のカナコ。それぞれの事情やさまざまな思いが語られる。震災遺構の保存や撤去、復興の方法に対する住民の意見は複雑で、決して一色ではない。被災者の数だけ異なる思いが去来する陸前高田に、巨大なクレーンがあらわれ、山手から市街地に土を運ぶため全長3キロのベルトコンベアが張りめぐらされる。行政の区画整理として盛り土造成が進められるのだ。それぞれの複雑な思いを孕みながら、元市街地で行う最後の七夕祭りが始まるところで映画は終わる。

写真提供:ミナ・T・ソン
Photo: RIKUZENTAKATA

日本の都市文化と環境批評を研究し、ポスト3.11の文学や映像作品に詳しいクリストフ・トゥニ氏は、被災地の様子を関東大震災や戦後、最近ではニューオーリンズのハリケーン・カトリーナなどのイメージと重ね合わせ、これらの大惨事のどこまでが自然災害で、どこまでが人工的な被害なのか、そしてそこにあった大地自体どこまで自然でどこまで人工的だったのか考えさせられるとコメントした。また、変わり続ける場所に、人は故郷を見出すことができるのか、というソン氏の問題提議に注目した。つまり、天災で街の様子がすっかり変わったところに、(ゼネコンなどの)グローバル資本が参入し、国の指針でどんどんと変貌していくときに、それでも住民はその土地に伝統や歴史的連続性を見出すことはできるのか。また惨事を記憶にとどめながら復興するとはどういうことか。各登場人物のスタンスの違いに、そういったさまざまな葛藤が伺える、そしてそれは日本だけの課題ではないと述べた。

Photo: Mina T. Son and Christophe Thounyソン氏によると、この作品はまだ完成しておらず、半年以内に再来日して残りを撮影する予定だそうだ。その後2~3年かけて編集し、完成した頃に被災地に大きな変化があった場合は、エピローグ的な場面を追加撮影する可能性もあるという。陸前高田の復興の道のりは長い。2018年まで仮設住宅に住まなければならない人もいる。陸前高田の市長は、復興に10年かかると言うが、市民は10年どころか20~30年かかると考えているそうだ。今後も復興の進捗を見守りながら、完成までじっくり時間をかけて取り組みたいとのことだった。