【アイハウス・プレス】 Escape from Impasse: The Decision to Open Japan

Escape from Impasse: The Decision to Open Japan By Mitani Hiroshi (Professor, University of Tokyo)
三谷 博 著(David Noble訳)

増補改訂版/2008年/388ページ/ハードカバー
ISBN 978-4-903452-06-7
原著『ペリー来航』(吉川弘文館/2003年)
定価 3,086円/優待価格* 2,160円(税込)
*優待価格は国際文化会館会員の方に適用されます。
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ペリー率いる黒船の来航により、開国を迫られた幕末日本。緊迫した東アジア情勢の中、徳川公儀は、いったんは鎖国に迷い込みながら、そこからの脱却を果たした。陰謀や権力闘争など外交政策の舞台裏を、まるでミステリー小説のように解き明かす日本開国史の決定版。

本書「はしがき」より

19世紀の半ば、日本は200年あまりの鎖国を解いて、西洋諸国と国交と貿易を始め、さらに従来から関係のあった中国・朝鮮など近隣の諸国とも、西洋の国際法を基礎として、対等で密接な関係を持つようになった。この本は、この開国と呼ばれている過程について概説し、さらにそこに含まれていた人類史に普遍的な問題について考える手がかりを与えようとするものである。日本人が西洋との関係を意識し始めたのは、ペリーの来航する60年も前であった。将来、世界制覇を続けている西洋が日本にも危機をもたらすのではないかと予想し、鎖国を強化するために海防と避戦を柱とする政策を立案していた。……その後、イギリスは大軍を隣国清に送ってこれを打ち負かした。西洋の支配を免れていた東アジア・北太平洋地域は、西洋の支配に怯えることとなったのである。……しかしながら、他の国々と違って、日本が近代史の中で唯一、他国の支配を免れることができたのは、予め、こうした予測を立て、対応のシナリオをある程度は用意していたからであった。

本書への推薦文

明治維新の外交前史を詳論した明快で洞察力に満ちた労作。1853年まで日本の「事情通」の「圧倒的多数」は鎖国政策を支持していたが、西洋諸国は開国を迫っていた。破滅的な戦争に発展する現実的な可能性があった。だが、日本の指導層は危険を察知し、政策を変更、「間一髪で」破滅を回避した。本書はまず日本の伝統的な対外政策と世界観、アヘン戦争とそれが国内にもたらした論争、日本との衝突に突き進んでいた西洋の思惑などに目を向ける。次に、1953~56年の日本の対外関係を、単にペリー提督とタウンゼント・ハリスの物語としてではなく、ペリー来航、1853・54年の対露交渉、ペリー再来航、1854年の日米和親条約、翌年の英露両国との条約などを通じた日本の対外関係思考の着実な発展として論じる。政策決定の背後にある思想を深く掘り下げ、日米和親条約の日本版と米国版の異同についての分析は際立っている。まさに必読書である。

——ハーバード大学ハーバード・イェンチン研究所歴史学教授
アルバート・M・クレイグ(Albert M. Craig)