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【japan@ihj】 CSR(企業の社会的責任)の可能性と限界 ~ヨーロッパ、アメリカ、日本の現在~


  • 講師: デイヴィッド・ヴォーゲル (カリフォルニア大学バークレー校教授)
  • コメンテーター: 梅津 光弘 (慶應義塾大学准教授)
  • 日時: 2013年11月19日(火) 7:00 pm-
  • 会場: 国際文化会館 講堂
  • 用語: 英語 (通訳なし)
  • 会費: 無料 (要予約)

地球温暖化や環境汚染への懸念が増す昨今、CSR(企業の社会的責任)活動に対する関心は、日本でも高まり、大手企業などでは、さまざまな取り組みが行われています。CSRに対する見方、役割、歴史などは国によって異なりますが、本プログラムでは、内外の事例を踏まえながら、CSRの可能性と限界について、アメリカにおける企業倫理研究の第一人者であるデイヴィッド・ヴォーゲル氏と慶應義塾大学の梅津氏にお話しいただきます。また、CSR活動の採算性や株主との関係について、そして現在の国際的な争点や日本企業のCSR活動についても考察いただきます。

略歴:デイヴィッド・ヴォーゲル

写真デイヴィッド・ヴォーゲルアメリカにおける企業倫理、CSR研究の第一人者。特に環境や消費者規制の国際的側面における政府と企業の関係に焦点をあてた研究に従事。邦訳されている主著に『企業の社会的責任徹底研究:利益の追求と美徳のバランス―事例による検証』(オーム社出版 2007)など。

プログラム・レポート

ここ10年でCSR(企業の社会的責任)は企業にとって重要な取り組みとなり、実践する企業も急増した。多くの企業は、ブランド価値の向上、社員のモラル維持、企業文化の醸成、途上国にある自社工場の近隣コミュニティーとの良好な関係の構築のためと同時に政府の規制への対応などの側面からCSRプログラムを取り入れている。さらに内在的動機として、企業への批判をかわし、回避するためということが挙げられ、その意味でCSRは企業にとってフィランソロピー(企業の社会貢献活動)や、コンプライアンス(法の順守)を超えた活動であるといえる。

しかし長年CSR活動の研究に従事してきたデイヴィッド・ヴォーゲル教授は、米国やヨーロッパのグローバル企業の事例をあげながら、CSRが企業行動の質の向上やプライベート・セクター(=民間企業)が環境および社会問題に取り組むことを推進したものの、CSRに期待できる範囲には限界があることを指摘した。CSRはブランド・イメージの向上には貢献するが、企業のミッションを変えたり、大きな形で環境や社会問題を抜本的に解決したり、企業の増益を生み出すほどの力はないと述べ、「良い行いは、収益につながる」という論に疑問を呈した。

デイヴィッド・ヴォーゲル教授また日本では、CSRという言葉が普及する以前から、従業員の間に「責任」という概念が根付いていたことや企業がCSR活動に近いことを実践してきたと加えた。教授は、日本に限ったことではないことを断った上で、日本の労働観が、海外の工場では、理解されないことがあり、また海外における自国企業の行動に対する世論の批判が日本では欧米ほど強くないと指摘した。

最後に、CSRのプログラムの構築には、その企業の評価リスク、どのようにCSRがその企業に利益を与えるか、などを吟味する必要があると述べ、CSRには全ての企業にあてはまる一つの規格があるわけではなく、各企業がそれぞれのミッション、リソース、ブランド・イメージなどに適したものをデザインすべきものであるということを強調した。その後、コメンテーターの慶應義塾大学の梅津光弘准教授が、「責任」と「倫理」という言葉が日本と欧米ではとらえ方が異なるため、日本においてCSRに対する誤解があったことに言及した。