【ALFP講演会シリーズ】
アジアにおけるドキュメンタリー ~可能性と挑戦~

    本イベントは終了しました。

  • パネリスト
    タンヴィール・モカメル(映画監督、作家 / バングラデシュ)
    コン・リッディ(映像作家、映画評論家、バンコクポスト紙 編集者)
    清 恵子(作家、キュレーター、メディア・アクティビスト)
  • 上映作品
    『ガーメント・ガールズ(原題:Bostrobalikara)』(バングラデシュ、2007年 / 30分*)

    *ショートバージョン

    『カダフィ(原題:Gaddafi)』(タイ、2013年 / 23分)

    『ノー・フィア・フォー・ミステイクス(原題:No Fear For Mistakes)』
    (ミャンマー、2017年 / 30分)

    上映作品の詳細は下記をご覧ください

  • 司会:マリオ・ロペズ (京都大学准教授)
  • 日時:2020年1月25日(土) 2:00~5:00 pm (開場:1:30 pm)
    ● 2:00~3:30 pm フィルム上映
    ● 3:45~5:00 pm パネルディスカッション&質疑応答
  • 会場:国際文化会館 岩崎小彌太記念ホール
  • 共催:国際交流基金アジアセンター
  • 用語:英語 / 日本語 (同時通訳つき)
  • 参加費:無料 (要予約: 定員180名)

ここ十数年のソーシャルメディアの著しい発展により誰もが情報やアイデアを社会へ発信できるようになり、従来のメディアに求められるものが変化しています。そのような中、アジアにおいてドキュメンタリーはどのような役割を果たしているのでしょうか。バングラデシュ、タイを拠点に第一線で社会の実態を記録し、発信し続けるドキュメンタリー映像作家2名と、ミャンマーを拠点に若手の映像作家の育成に尽力するメディア・アクティビストを迎え、人類の記録映像や報道媒体など、さまざまな側面を持つドキュメンタリーの可能性についてお話しいただきます。前半は、パネリスト3名が携わったショートフィルムを上映し、製作者と現地の人々の葛藤と希望を肌で感じる機会を設けます。

タンヴィール・モカメル (映画監督、作家)

写真:モカメルバングラデシュを代表する映画監督。これまでに、チッタゴン丘陵地帯の先住民族と入植者との対立を描いた『コルノフリの涙』(2005年)や、バングラデシュの衣料工場で働く若い女工たちを撮った『ガーメント・ガールズ』(2007年)など、社会性の高いテーマを扱った6本の長編映画と14本のドキュメンタリーを製作し、国内外で高い評価を受けている。また、新聞への寄稿のほか、詩、短編小説、文芸批評など数多くの作品を執筆。主著に、世界映画の歴史を考察した『A Brief History of World Cinema』(Bangla Academy、1987年)や、農村地域で不利な状況下に置かれた人々のための教育について執筆した『Grundtvig and Folk Education』(Progoti Publishing House、1997年)などがある。現在、バングラデシュ映画研究所(BFI)とバングラデシュ・フィルム・センター(BFC)のディレクターを務める。(2009年度ALFPフェロー)
コン・リッディ (映像作家、映画評論家、バンコクポスト紙 編集者)

写真:リッディタイの代表的な英字新聞であるバンコクポスト紙のアートや文化を担当するセクションにおいて、20年以上にわたり、編集者および映画評論家として執筆に携わる。映画や芸術について書くことは、作り手と受け手の間に建設的な対話を生み、今日の世界のありようを理解する一助になるという信念を持つ。また、映画製作者として、タイでは少数派のイスラム教徒に関する3本のドキュメンタリーを共同製作。2作目の『改宗』(2008年)は、仏教徒の女性がイスラム教徒の男性と結婚するために改宗するというストーリーで、タイ、カナダ、台湾、シンガポール、インドネシア、日本(山形)の映画祭で上映された。視覚情報で溢れた現代における動画の政治性に関心がある。また、新聞購読者が減少する時代における活字記者と、動画の力を信じる映画製作者という二つの側面をもつ氏は、メディアの新しい可能性にも関心を寄せる。(2010年度ALFPフェロー)
清 恵子 (作家、キュレーター、メディア・アクティビスト)

日本でビデオキュレーターとして働くうちに全体主義国家におけるメディア状況に関心を持ち、1988年にメディアや独立メディア研究のために東欧に拠点を移動。東欧の変革に貢献する活動家やジャーナリスト、芸術文化関係者と数多くのプロジェクトに携わる。その後は内戦に関連して旧ユーゴスラビアの独立メディアやメディア・アクティビズムの問題に取り組み、コーカサスや中央アジアにも活動の域を広げる。2002年に東南アジアに活動の拠点を移し、ミャンマーで映像作家を育成する教育活動を開始する。2011年には同国初の映画祭「ワッタン映画祭」の立ち上げを支援した。
マリオ・ロペズ (京都大学准教授)

写真:ロペズ京都大学東南アジア地域研究研究所にて2009年より教鞭をとる。地球環境と人類社会の持続可能性を「生存圏」という分析枠組みからとらえる生存基盤指数(HPI)や、超高齢化社会の需要に応じてアジア太平洋地域から働きに出る看護師や介護士などの労働者や移民の流れを研究。なかでも日本におけるフィリピンの移民労働者に関する論文を国際学術誌へ多数寄稿。また、日本および東南アジアの若手映像作家と地域研究者の橋渡しを目的とした「ビジュアル・ドキュメンタリー・プロジェクト」に携わる。九州大学大学院比較社会文化学府・研究院にて博士号取得。

上映作品について

ガーメント・ガールズ(原題:Bostrobalikara)(バングラデシュ、2007年 / 30分)
監督&脚本:タンヴィール・モカメル

ノー・フィア
衣料品の輸出大国であるバングラデシュ。国内の衣料工場では、約200万人いる労働者の85%を女性が占める(2007年製作当時)。その家族を含めた1,000万人の生活がこの産業にかかっているが、人々の将来は約束されず、問題が山積している。これまでに約3,000人がビルの火災や崩壊で命を落とし、賃金も衣料産業が盛んな国の中では最も低い。健康、安全、賃金の他にも、労働者は多くの不満を抱えている。この状態でバングラデシュの衣料産業は持続するのか、また、国際貿易がもたらす困難に向き合えるのか。作品は衣料工場で働く3人の少女を追う。

カダフィ(原題:Gaddafi)(タイ、2013年 / 23分)
監督:パヌ・アリー、カウィーニポン・ケットゥプラシット、コン・リッディ

カダフィ
タイの総人口6,900万人の4%にあたるイスラム教徒は、通常、タイ名とムスリム名の2つの名前を持っている。だが、バンコクに住む14歳の少年は例外だった。リビアの元最高指導者であるカダフィ大佐に心酔する父親によって、カダフィ・ムハマドというムスリム名のみが与えられていた。しかし、2011年にカダフィ政権が崩壊し、反カダフィ派によって大佐が殺害されて以来、カダフィ少年の母親は、変わった名前によって息子が不利益を被るのではと不安を募らせる。本作品は「名前」というものに対して人々が抱き続けている問いを投げかける。

ノー・フィア・フォー・ミステイクス(原題:No Fear For Mistakes)
(ミャンマー、2017年 / 30分)監督:アウン・トゥ

ノー・フィア
ミャンマーにあるシャン州サンク村の子どもたちが、カヤー州の州都ロイコーに夏季合宿に出かける。その案内役を務めるのは、元ビルマ空軍パイロットの僧侶だった。一見何気ない合宿の記録のように見えながら、権力構造、宗教、多民族といった複雑なミャンマーの現状が織り込まれ、上映のたびにさまざまな議論を引き起こす作品。監督のアウン・トゥは、カレン族であることから雇用や教育の機会が十分に得られない中、映画制作に希望を見出した20代の映像作家。

 
 

*アジア・リーダーシップ・フェロー・プログラム(ALFP)は、国際文化会館と国際交流基金が1996年より共同で実施している事業で、社会の課題に積極的に取り組む市民社会に根ざした各分野の知識人をアジア諸国から2カ月間フェローとして招聘し、意見交換や共同作業を通じて、信頼関係の醸成や、国や専門を超えた人的ネットワークの拡大・強化を目指すものです。