【日印対話プログラム/APYLPジョイント・セッション】
インド発~テクノロジーと新しい価値の創造「人の移動と空間」

    本イベントは終了しました。レポートはこちら

  • スピーカー:リテシュ・アガルワル(OYO Hotels & Homes 創業者/CEO)
  • モデレーター:伊藤 錬(メルカリ執行役員[グローバル戦略])
  • 日時:2019年12月6日(金) 6:30pm~(開場 6:00 pm)
  • 会場:国際文化会館 岩崎小彌太記念ホール
  • 用語:英語/日本語(同時通訳付き)
  • 共催:シャハ二・アソシエイツ株式会社
  • 参加費:無料 (要予約)

世界80カ国でホテル・住宅・コワーキング事業を展開し、現在、世界最大級の運営客室数を誇る成長著しいインド発のユニコーン企業OYO。「3タップでホテル予約」という謳い文句を実現させたOYOの出現により、リーズナブルで信頼できるホテルが増えたインドでは、都市部でクリケットの試合のある日や停電で家のエアコンが使えない時など、日常生活の延長線上でホテルに泊まる人が出てきているといいます。このOYOが今年、日本で不動産サービスに進出し、「旅するように暮らす」をコンセプトに新しいビジネスモデルで「住」のパラダイムシフトを起こしています。
住む場所や働く場所を堅牢で確固たるものとし、そこを拠点に移動を繰り返すという従来のライフスタイルに、ITを駆使して現代の多種多様な社会に合った新たな住空間を提示し、「所有からの解放」といった新しい価値を人々が取り入れやすい形で作り出しているアガルワル氏に、インド発のテクノロジーと新しい価値の創造についてお話しいただきます。

<2019年度フェロー>
リテシュ・アガルワル(OYO Hotels & Homes 創業者/CEO)

width=1993年生まれ。大学中退後、アジア初のティールフェロー(PayPal創業者による若手起業家育成プログラム)に選ばれ、ホテル業界で起業。宿泊需給データを人工知能で常時分析するなどのテクノロジーを駆使し、インドを中心に世界各地でホテル事業を展開する。これまでにフォーブス誌の「30アンダー30」に選出されるなど、社会変革を担う若手起業家として注目を集め、ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから数百億円規模の投資を受けている。2018年には日本の不動産業界に進出を果たした。

<モデレーター>
伊藤 錬(メルカリ執行役員[グローバル戦略])

width=東京大学法学部卒業後、外務省に入省し、東京及びワシントンDCで日米関係を担当。2015年9月よりメルカリに参画し、グローバル展開を担当。ニューヨーク大学ロースクール、スタンフォード大院修了。ニューヨーク州弁護士。ニューヨーク大学シニアフェローも務める。

レポート

講演を通して、人々のニーズを把握することの大切さを強調したリテシュ・アガルワル氏。モデレーターの伊藤錬氏(メルカリ執行役員)との対談の中でも、OYOビジネスモデルやミッションが、多くの人々が抱えている根本的問題を解決することといかに密接であるかを語った。

アガルワル氏は人生で初めて起業したオンライン旅行会社が成功した時も、その事業が人々の抱える問題解決にはつながらないという理由で、すぐに撤退を決めたと言う。そして、3か月半に渡って元取引先の小規模ホテルや宿泊施設を泊まり歩き、この業界が本当に必要としているものを探す日々を送った。

OYO Roomsはこの経験を通して生まれたもので、テクノロジーを駆使して、小規模ホテル経営のニーズに特化したサービスを提供しているのも、このような背景があってのことだと言う。たとえ成功率が10-20%台であってもチャンスがあれば挑戦しようという起業家精神を持つアガルワル氏は、駄目でもともとの覚悟で挑んだOYOの最初のパートナーホテルの稼働率を、データ分析を活用することで、サービス開始ひと月後には18%から90%に押し上げることに成功した。

アガルワル氏は、最初のオンライン旅行会社の立ち上げからOYO設立に至るまでの間に、カリフォルニアで2年間のティールフェローシップ・プログラムに参加し、10万ドルの資金と、著名な起業家や投資家、科学者とのコネクションを手に入れている。そして大きな夢を抱えてインドに戻り、OYOを驚異的な成長軌道に乗せた。カリフォルニアで、大きな視野で物事を考えることの重要性を学んだと説くアガルワル氏は、いまや800の都市 で事業を展開し、OYOを世界第2位の客室数を誇るホテルチェーンにまで成長させている。ホテルの質と稼働率の向上を実現させつつ、宿泊料金の値下げも叶えたアガルワル氏は、「イノベーションは実験室の中で起こるのではない。ビジネスモデルに創造性を持たせて試行錯誤する日々の中で起きるのだ」と強調した。

モデレーターの伊藤氏からの「その情熱はどこから湧いてくるのか。成し遂げた功績に満足せず挑戦し続けられるのはなぜか」という質問には、「OYOでは数字よりも潜在的効果を重要視している。世界で30億人にものぼるという中所得層の人々にとって、もはや低価格は低品質を意味するものではなくなっている」と答えた。そしてOYOが目指すのは、広く一般の人々によりよい居住空間を提供することであり、それを今後40~50年かけて追い求めていきたいという考えを参加者に共有した。

また、OYOは人々を「所有すること」から解放しようとしているのかという問いには、最近は「この宝石が欲しい」という人よりも「休暇にはここに出かけたい」と言う人が増えてきており、世の中に「所有」よりも「経験」に価値を見出す動きがあるという事実に触れつつ、アガルワル氏自身も家を所有する気持ちは全くないと回答した。

今回の来日も0泊1日でこなさなければならないほど多忙を極めるアガルワル氏。伊藤氏がどのように時間管理やタスクの優先順位付けをしているのか質問すると、やはり人に焦点を当てた答えが返ってきた。曰く、いかに最高の人材を引き寄せられるかがOYOの成功の鍵を握っており、これまでにアガルワル氏の直属の部下は一人も辞めていないことに誇りを持っているとのこと。スタッフの生活を楽にして初めて、彼らの信頼を得られるのだと言い切った。また彼は自身のことをしばしば「最高明瞭責任者(Chief Clarity Officer)」であると述べており、スタッフが効率的に意思決定できるよう「何をするのか」、さらには「何をしないのか」を明確にすることが自らの役割だと明言した。細やかな方向付けをすることも重要で、アガルワル氏は、彼のチームと一緒に、何が有効で何か有効でないかを見極めることに大半の時間を割いているとも述べた。

最後に、インドと日本の関係をより強く深いものにするための4つの提案として、①休暇に観光客としてではなくインドを訪れ、地元の人々と交流し異文化に肌で触れること、②インドの才能を発掘し、少額で構わないのでスタートアップ起業家に投資すること、③もし経営者であれば、インド人材を雇用すること、④小さな会社をインドに立ち上げて現地の市場について学ぶことを挙げた。そしてインド国内を広く見て回ることは、起業家として何にも勝る経験になるだろうと締めくくった。

日印対話プログラムとは
日印国交樹立60周年を迎えた2012年に、日本とインドの間の継続的な対話の「場」を創出することを目的に、人物招聘事業(Japan-India Distinguished Visitors Program)を立ち上げました。本プログラムは、社会のさまざまな問題の解決に向けて新しい価値やアイデアを提案している、インド国内で影響力のある人物を、政治・経済・文化・学術・科学など幅広い分野から年間1-2名、1週間程度日本に招聘しています。招聘フェローは、講演会、関連機関への訪問、地方視察などを通して日本の関係者と意見交換やネットワーク構築を行います。