2005年度 アイハウス・パブリック・プログラム

マキャヴェリの子供たち: 日伊の歴史にみるリーダーシップの役割

  • 講師: リチャード・サミュエルズ(マサチューセッツ工科大学教授)
  • 司会& コメンテーター: 猪口孝(中央大学教授)
  • 日時: 2005年10月12日(水)7:00 pm
  • 会場: 学士会館 320号室
  • 会費: 一般1,000円、割引料金*無料 *割引料金は国際文化会館会員の方に適用されます。
  • 用語: 英語(日本語同時通訳付き)

日本とイタリアの近代史を紐解くと、リベラリズムの失速、ファシズムの台頭、帝国主義的領土拡張、アメリカの同盟国としての国家再建等、平行した歴史的経路を歩んできたことがわかります。今回の講演でサミュエルズ教授は、異なった国民的アイデンティティの形成にもつながる、歴史的に重要な局面での日伊の政治指導者の決断の事例やリーダーシップの役割を論じながら、比較歴史研究の視点で日伊両国の近代国家形成史を考える上での別の視座を提供します。サミュエルズ教授の講演の後は、政治学者の猪口孝教授にコメントをいただく予定です。今回の講演は、一昨年刊行されました Machiavelli’s Children:Leaders and Their Legacies in Italy and Japan (Cornell University Press, 2003)に基づくもので、この長年の研究の集大成である同書により、イタリア歴史研究協会2003年度マラロ賞及び米国政治学会2004年度エルビス・シュローダー賞を授与されました。この著書の邦訳は、東洋経済新報社から近刊予定です。

略歴:リチャード・サミュエルズ

リチャード・サミュエルズ教授は、マサチューセッツ工科大学(MIT)フォード社会科学記念講座教授で、国際研究センター所長。MIT日本研究プログラム創設の際の初代所長。米国を拠点に海外における日本研究の推進に寄与する一方で、米国連邦政府の独立した研究助成機関である日米友好基金の理事長として、日米間のさまざまな文化教育交流事業に携わっています。他の主な著書に、Rich Nation, Strong Army: National Security and the Technological Transformation of Japan(Cornell University Press, 1996)があります。

パネル ディスカッション
東洋の女性―オリエンタリズムの創る神話を超えて

  • 講師: シェリダン・プラッソ(ジャーナリスト)
  • 講師: ウルワシー・ブターリア(”女たちのカーリ”共同創設者)
  • モデレーター: 竹中千春(明治学院大学教授))
  • 日時: 2005年9月26日(月)7:00pm
  • 会場: 学士会館 202号室
  • 用語: 日本語・英語(英日同時通訳あり)
  • 会費: 一般1,000円、割引料金*無料 *割引料金は国際文化会館会員の方に適用されます。
  • 用語: 英語(日本語同時通訳付き)
  • 共催: ジャパン・ソサエティー
  • 協力: 国際交流基金(ジャパンファウンデーション)

グローバル化が日々進展する昨今、メディアの役割はますます重要になり、人間の知覚形成に大きな影響を及ぼしています。メディアは現代社会における情報伝達を効率化する一方で、時に巨大な力として、社会的弱者に対し作用し、現実と乖離した一方的なイメージを植え付けることがあります。今回のパネル・ディスカッションでは、米国及びインドからお二人の識者をお招きし、西洋メディアに表象されるアジア女性の誤ったイメージ(像)やステレオタイプを紹介しながら、『オリエンタリズム』という支配の力学の中での『作られたアジア』 という仮説の検証を通じ、他文化理解・アジア理解の再考を試みます。

略歴:シェリダン・プラッソ

シェリダン・プラッソ氏は、『ビジネス・ウィーク』のアジア版の編集を中心に取材活動を行ってきたアジア専門のジャーナリスト。15年以上に渡りアジアの動向を常に注視し続けてきた氏の記事は、『ニューヨーカー』、『ニューヨーク・タイムズ』、『ニュー・リパブリック』、『フォーチュン』、『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』などに掲載。特に、カンボジアの地雷被害者関連取材により、人権報道賞を受賞。2003年、ニューヨークのジャパン・ソサエティーが主催する日米メディア・フェローズ・プログラム(協力:国際文化会館)のフェローとして来日。長年の探求領域である『アジア女性のステレオタイプ』の枠組みで、誤ったイメージとしての日本女性像にフォーカスを置き、研究。その際の調査をこれまでの蓄積と融合させ、The Asian Mystique: Dragon Ladies, Geisha Girls, & Our Fantasies of the Exotic Orient (Public Affairs, 2005)という著書を本年度刊行しました。

略歴:ウルワシー・ブターリア

ウルワシー・ブターリア氏は、アジア初のフェミニズム専門出版社「女たちのカーリー」の創設者。インドの性差別問題及び宗派間対立などのテーマに関しての鋭い社会批評で国際的にも知られ、インド・パキスタンの分離独立をテーマとしたThe Other Side of Silence: Voices from the Partition of India 邦訳『沈黙の向こう側』(明石書店刊、2003年)では、女性の視点から、インド現代史の再評価を行い、ベストセラーとなりました。2000年、アジア・リーダーシップ・フェロー・プログラム(共催:国際文化会館、国際交流基金)にて来日。2003年には、日経アジア賞を受賞。

現代世界における宗教の変容と革新:社会人類学的視点から

  • 講師: ピーター・クラーク( オックスフォード大学教授 )
  • 日時: 3月28日(月)7:00pm
  • 会場: 国際文化会館  講堂
  • 用語: 英語(日本語同時通訳付き)

今回の講演では、アジアにおける仏教及びヒンドゥー教の変化、アフリカを舞台に した新しい形態のキリスト教の普及、ラテン・アメリカに見られる新キリスト教保守 の動き、中東における近代的な形をとったイスラム急進主義の台頭、欧州に見られる イスラムやアジア宗教の影響力の拡大などの動向を中心に、近代化やグローバル化が 世界宗教に及ぼす影響について論じていただきます。

略歴:ピーター・クラーク

ピーター・クラーク教授は、オックスフォード大学で歴史学を専攻後、ロンドン大学 キングス・カレッジで宗教社会学、特に現代イスラムに重点を置いた研究で博士号を 取得。25年に渡る歴史学及び宗教社会学の分野での多大な功績によりロンドン大学キ ングス・カレッジ名誉教授に任命される一方、現在はオックスフォード大学ウォルフ ソン・カレッジの一員として同大学の神学部で教鞭をとられています。また、バーミ ンガム大学でも名誉職にあります。その研究は、欧州、アフリカ、アジア、ラテン・ アメリカなどの文化圏に見られる宗教間のダイナミズム(相互作用)に焦点を当て、 アイデンティティ、シンクレティズム(重層性・混合性)、癒し、至福千年説などを ライト・モチーフとした現代宗教の変遷・発展を主なテーマとしています。著書に は、日本の新宗教をグローバルな視野から捉えたJapanese New Religions: In Global Perspective (London: Curzon Press, 2000)の他、New Trends and Movements within the World of Islam (London: Luzac Oriental, 1998)、Religion Defined and Explained (共著 Macmillan, 1993)、New Religions in Global Perspective: A Study of Religious Change in the Modern World (London: Routledge, 近刊)などがあり、Journal of Contemporary Religion(現代宗教ジャー ナル)の編集も手掛けています。

社会科学国際フェローシップ 新渡戸フェロー・木川田フェロー
在外研究報告会

  • 司会: 藤倉皓一郎(同志社大学法科大学院教授、国際文化会館評議員)
  • 日時: 3月23日(水)2:30 pm
  • 会場: 国際文化会館 樺山ルーム
  • 会費: 一般1,000円、割引料金*無料 *割引料金は国際文化会館会員の方に適用されます。
  • 用語: 日本語

国際文化会館は、日本の社会科学の様々な分野で将来指導層となり、また学術文化の 国際交流を積極的に進めていく意欲と能力を持つ人材の養成を目指して、1976年より 「社会科学国際フェローシップ・プログラム」を実施しています。国際相互理解の増 進に先駆者的役割を果たした新渡戸稲造博士(1862-1933)にちなんで「新渡戸フェ ローシップ」とも呼ばれているこのプログラムは、毎年若手の社会科学研究者数名を 選抜し、海外の大学・研究機関に派遣するもので、現在は、国際交流基金、二十一世 紀文化学術財団(木川田記念財団)などの協力により運営されています(派遣フェロー総数159名)。
経済-政策関連

  • 和久井理子(大阪市立大学 助教授(経済法) (2002-03) )
  • 「情報通信分野における競争政策の研究」 ロンドン政治経済学院(英国)
  • 清田耕造(横浜国立大学 助教授(国際経済学) (2003-04)   )
  • 「WTO(ドーハ・ラウンド)と地域自由貿易協定:日・米・東アジアに期待される経済効果」 ミシガン大学(米国)

経済-企業関連

  • 首藤若菜(東京国際大学 助教授(会計学) (2003-04))
  • 「時価情報が企業価値評価に及ぼす影響に関する研究」 ティルブルグ大学(オランダ)
  • 若林公美(東京国際大学 助教授(会計学) (2003-04))
  • 「時価情報が企業価値評価に及ぼす影響に関する研究」 ティルブルグ大学(オランダ)

政治-地方分権の国際比較

  • 山崎幹根(北海道大学 助教授(行政学) (2002-03) )
  • 「スコットランド地方の地域開発政策を事例とした中央地方関係の日英比較」 アバディーン大学(英国)
  • 永井史男(大阪市立大学 助教授(国際政治、タイ政治) (2003-04))
  • 「タイ国の地方分権研究:タイ、日、英、仏の4カ国比較を中心に」 オックスフォード大学(英国)

歴史-20世紀前半の国際関係史

  • 後藤春美(千葉大学 助教授(国際関係史) (2003-04) )
  • 「国際連盟によるアヘン・麻薬の国際的取締―とくにイギリスの役割を中心に」 オックスフォード大学(英国)
  • 大中真(桜美林大学 専任講師(国際関係史) (2004-05))
  • 「第二次世界大戦期におけるバルト諸国併合問題をめぐる研究―小国の独立喪失にみる国際関係の転換と冷戦の起源」 オックスフォード大学(英国)

(以上、発表予定順)

ALFP報告会
移民問題とメディア-虚像と現実

  • 講師: マヘンドラ・ラマ(ジャワハルラル・ネルー大学経済学教授、シッキム州長官付経済 問題チーフアドバイザー〈インド〉)
    アン・リー(”Linking Media and Research: A Migration Case Study”プロジェクト ・ディレクター、Kuali Group芸術監督〈マレーシア〉)
  • 司会: 竹田いさみ(獨協大学教授、ALFP諮問委員)
  • ディスカッサント: 梶田孝道 (一橋大学教授)、 木村文 (朝日新聞記者)
  • 日時: 2003年3月16日(水)(火)7:00 pm-9:00pm
  • 共催: 国際文化会館、国際交流基金

日本の建築(家)は世界的な建築誌Domusでもしばしば取り上げられるように、世界で注目され続けています。丹下健三、黒川紀章、磯崎新、槇文彦、安藤忠雄、長谷川逸子、山本理顕、伊東豊雄、青木淳、大江匡、坂茂、など多くの建築家が脚光をあび、海外で仕事をしています。なぜこのように日本建築が世界を惹きつけるのでしょうか。今回の講演では、米日財団メディア・フェローとして来日中のピアソン氏に、2ヶ月間の調査・観察を基礎にして、世界の建築のトレンド及びその中における日本建築の位置付け、さらに将来的な展望を視野に入れながらその魅力について論じていただく予定です。また「世界が求める日本建築」(『外交フォーラム』2003年1月号)を書かれた、建築家の 隈 研吾氏 をコメンテーターとしてお招きしています。

略歴:クリフォード・ピアソン

クリフォード・ピアソン(Clifford Pearson)氏は、都市研究と法律をコーネル大学で学び、コロンビア大学で建築史の修士号を取得。1981年から建築ジャーナリストとして活動を開始、1989年より建築誌Architectural Record の編集陣に加わり、主としてアジア建築を担当しています。またNew York Times 紙やWashington Post紙などにも多数の記事が掲載されています。主な編著書としては、Modern American Houses: Four Decades of Award-winning Design in Architectural Record (New York: Harry Abrams, 1996 )、Indonesia: Design and Culture: Java, Sumatra, Sulawesi, Bali ( New York: Monacelli Press, 1998 ) があります。

新渡戸フェロー在外研究報告会/パネル・ディスカッション

  • 「インターネット時代における在外研究:21世紀の国際学術交流への提案」
  • 司会: 牟田博光 (1980-82新渡戸フェロー、東京工業大学大学院教授・同教育工学開発センター長)
  • 日時: 2003年3月27日 (木) 4:00~8:30 p.m.
  • 会場: 国際文化会館講堂
  • 用語: 日本語(通訳なし)
  • メディアのあり方と移民問題を事例にした研究調査を関連づけた共同研究プロジェク ト”Linking Media and Research: Migration Case Study”は、中国、インド、韓国、 マレーシア、フィリピン、タイ、そして日本の7ヶ国の外国人移住労働者に関するメ ディア報道についての比較調査を含めた、国境を越える移民問題を扱ったもので、 2001年度のアジア・リーダーシップ・フェロー・プログラム(国際文化会館・国際交流基金共催事業、通称:ALFP)のフェロー自身のイニシアティブによる初めての 試みとして、ごく最近その一連の研究を終えました。

    外部から3名の研究者の協力を得て、ALFP2001年度フェローは、アジア地域の将来に とって最重要課題のひとつであると考えられる移民問題、特に、メディアによる取り 扱いと一般市民の受け止め方や政府の政策との関係に注目し、その検証を行いまし た。フェローたちが2001年当時考え、プロジェクトが完了した現在さらに強く確信し たのは、メディア、世論、国の政策立案と移民への対応は一つの車輪の輻のようなも ので、より正確な情報と配慮に満ちた責任ある報道環境によって好影響をもたらすこ とができるということです。そして、このプロジェクトは、メディア情報キットとい う形での具体的な成果を伴いました。

    このトランスナショナルな研究は、移民問題と情報発信の主流をなす組織(新聞社や テレビ局)によるその報道姿勢に関する各国の報告を含め、1)歴史・文化、2)社 会・政治、3)経済、4)安全保障・戦略、5)報道の傾向といった移民問題に関わ る5つの重要な要素を網羅しながら、南アジア、東南アジア、東アジアにおける国境 を越えた人の動きの主な動向に関する俯瞰図を提供しています。メディアはとかくセンセーショナルな報道で批判をあびますが、ALFP2001のフェローたちはジャーナリス トたちがどのような情報源をもとに報道しているかというだけでなく、どのような制 約を受けながら報道しているのかについても注目することが重要であると考えました。

    この報告会では、プロジェクトに参加した二人のフェローにこれらの研究過程と成果 を報告していただき、また、お二人のディスカッサントをお迎えし、このようなボー ダレスな取り組みとしての研究プロジェクトの意義についてコメントをしていただきます。