【特別企画】『Breasts and Eggs』著者の川上未映子氏とローランド・ケルツ氏の対談—英訳される日本文学

※本イベントは終了いたしました。レポートはこちら

 

 

©Picador
  • 対 談: 川上 未映子(詩人、小説家)、ローランド・ケルツ(作家)
  • 紹 介: 柴田 元幸(翻訳家)
  • 日 時: 2020年10月18日(日) 10:00~11:30 am
  • 会場参加型: 国際文化会館 岩崎小彌太記念ホール
    満席となりましたので受付を終了しました。
  • オンライン: ウェビナー形式
    対象:全員、ご登録受付の自動返信メールにて参加URLをお知らせ)
  • 用 語: 英語(日本語から英語への逐次通訳付き)
  • 共 催: Asia Society Japan Center
  • 会 費: 無料(要予約

日本を代表する作家、川上未映子氏は、芥川賞受賞作『乳と卵』をリブートした長編小説『夏物語』英訳版によって本年英語圏で単行本デビューし、大きな反響を呼んでいます。村上春樹氏や小川洋子氏も称賛する彼女の小説は、米英での刊行と同時に『ニューヨーク・タイムズ』や『ガーディアン』でも、その独特の語り口や詩的で隠喩的な文章、現代社会における問題を描く筆致の鋭さが高く評価されています。今回、日本人とアメリカ人を両親に持つ作家のローランド・ケルツ氏との対談という形で、『Breasts and Eggs』やその他の英訳された短編について、海外での反応や、自身の作品が翻訳されることなどについて語っていただきます。当日は10月に刊行予定の英語文芸誌『MONKEY』責任編集者の柴田元幸氏もお迎えします。川上氏の専属通訳を、氏の小説や詩の翻訳を数多く手掛ける由尾瞳氏(早稲田大学准教授)が務めます。

※対談終了後に川上未映子さんによる『Breasts and Eggs』、Roland Keltsさんと柴田先生による『MONKEY』の販売とサイン会を実施いただけることになりました!(いずれも数に限りがございます、予めごご了承ください)

川上 未映子

©YUTO KUDO /Madame Figaro Japon

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』が第137回芥川賞候補に。同年、第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。『マリーの愛の証明』にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』、短編集『ウィステリアと三人の女たち』など著書多数。『早稲田文学増刊 女性号』では責任編集を務めた。最新刊の長編『夏物語』は第73回毎日出版文化賞を受賞。『夏物語』は2020年4月にアメリカで『Breasts and Eggs』として出版され、続いてイギリス、ドイツ、イタリアでも刊行された。また20カ国以上で刊行されることが決定している。

ローランド・ケルツ

©Takahashi Nobumasa

ニューヨークと東京を拠点に活躍する作家、エディター、エッセイスト、大学講師。日本の現代文化を世界中に紹介し、ニューヨーク大学や東京大学など、日米の数多くの大学で講義を行う。アメリカ、ヨーロッパ、日本のメディアで執筆し、主な媒体に『ザ・ニューヨーカー』、『ニューヨーク・タイムズ』、『ハーパーズ・マガジン』、『クリスチャン・サイエンス・モニター』、『ガーディアン』、『ニュー・ステーツマン』、『タイム』、『ニューズウィーク日本版』、『読売新聞』、『ジャパン・タイムズ』他がある。
宮崎駿氏や村上春樹氏など著名な文化人へのインタビュアーとしても知られ、現代日本の文化とメディアのエキスパートとして名高く、CNN、NPR、NHK、BBCなどにコメンテーターとして出演もしている。
近年では中国での世界経済フォーラムやTEDで講演し、2017年ハーバード大学ニーマンジャーナリズム財団よりニーマン・フェローに選出された。翻訳家で米文学者の柴田元幸氏が共同責任編集者を務める国際的な文芸誌『Monkey: New Writing from Japan』の顧問編集者。

柴田 元幸

©島袋里美

1954年生まれ、東大名誉教授。文芸誌『MONKEY』責任編集。ポール・オースター、レベッカ・ブラウン、スチュアート・ダイベック、レアード・ハント、スティーヴン・ミルハウザーなどアメリカ文学の翻訳多数。2018年にマーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒けん』を刊行し好評を博す。『MONKEY』英語版第1号が10月刊行予定。

レポート

10月18日、柔らかな秋の日差しが差し込む会館のホールで実施された、芥川賞受賞作家の川上未映子氏と作家で編集者のローランド・ケルツ氏の特別対談。翻訳家で米文学者の柴田元幸先生によるイントロダクションでは、川上氏を「遊び心を持って楽器で音楽を奏でるように言葉を操ることのできる稀有な作家」と紹介し、参加者のテンションが一気に上がるのが感じられました。

その後、川上、ケルツ両氏による『夏物語』 (“Breasts and Eggs”) の日英での朗読から始まった対談では、貧困・格差問題から、生命倫理、作家として憑りつかれている強迫観念、翻訳本の読者を通して見える新しい世界、言葉に帰属する関東と関西の文化の違い、小説をオーディオブック化することなど、幅広いトピックについて語られました。標準語と大阪弁を使い分け、これらの話題を自在に行き来する川上氏と、聞き手として核心に迫る質問を投げるケルツ氏のテンポの良い掛け合いで、会場は終始和やかな雰囲気に包まれていました。

今回は会場の様子をライブ配信し、会場参加型とオンライン参加型のハイブリッド形式での開催を試みましたが、世界各国のYouTube視聴者からは「川上さんの関西弁を生で聴けた!」など喜びの声がコメント欄に沢山寄せられ、会場とは違った盛り上がりが見られました。