Delve into Japanese Culture@I-House

2014年にスタートした、英語による日本文化講座です。本シリーズでは、日本文化をさまざまな切り口で取り上げ、外国人の方にも日本人の方にも、新たな発見があるような内容をご紹介しています。

 

【Delve into Japanese Culture @I-House】
「ジャパン・ブランド」の裏側を探る ~ハローキティから村上春樹、こんまりまで

本イベントは終了しました。レポートはこちら

 

  • 講師: ローランド・ケルツ (作家)
  • 日時: 2018年4月24日(火) 7:00~8:30 pm
  • 会場: 国際文化会館 樺山・松本ルーム
  • 用語: 英語 (通訳なし)
  • 会費: 1,000円
    (学生は500円、国際文化会館会員と前日もしくは当日、国際文化会館にご宿泊の方は無料)
英語で日本文化を学びたい方に向けて開催している英語講座シリーズです。今回は『ジャパナメリカ 日本発ポップカルチャー革命』(武田ランダムハウスジャパン、2007年)などの著書で知られる、作家のローランド・ケルツ氏をお招きし、現代の日本文化の海外での受容についてお話しいただきます。村上春樹を筆頭に、ハローキティ、こんまり、家計簿、アニメ、漫画、ゲームに至るまで、観光客の急増も相まって、日本の文化的概念や製品に対する世界の受容やニーズは増大しています。日本人とアメリカ人のハーフの作家であるケルツ氏が、輸出される文化の要にある日本の美学や職人技、社会的行動の特徴を検証します。

ローランド・ケルツ

©Takahashi Nobumasa
ニューヨークと東京を拠点に活躍する作家、エディター、エッセイスト、講師。日本の現代文化を世界中に紹介し、ニューヨーク大学や東京大学など、日米の数多くの大学で講義を行う。アメリカ、ヨーロッパ、日本のメディアで執筆し、主な媒体に『ザ・ニューヨーカー』、『ニューヨーク・タイムズ』、『ハーパーズ・マガジン』、『クリスチャン・サイエンス・モニター』、『ガーディアン』、『ニュー・ステーツマン』、『タイム』、『ニューズウィーク日本版』、『読売新聞』、『ジャパン・タイムズ』他がある。 宮崎駿氏や村上春樹氏など著名な文化人へのインタビュアーとしても知られ、現代日本の文化とメディアのエキスパートとして名高く、CNN、NPR、NHK、BBCなどにコメンテーターとして出演もしている。 近年では中国での世界経済フォーラムやTEDで講演し、2017年ハーバード大学ニーマンジャーナリズム財団よりニーマン・フェローに選出された。翻訳家で米文学者の柴田元幸氏が共同責任編集者を務める国際的な文芸誌『Monkey Business: New Writing from Japan』に頻繁に寄稿している。今夏より、祖父の母校である早稲田大学にて教べんを執る。

レポート

日本人を母に、アメリカ人を父に持ち、日本文化に造詣が深いアメリカ人作家のローランド・ケルツ氏。日本文化の海外での受容についてさまざまな実例を交えて解説し、世界を引きつける日本ブランドの深層に何があるのか考察した。

◆日本アニメ的なアメリカと、アメリカドラマ的な日本

日本に6歳頃まで住んでいたケルツ氏。その後アメリカに渡ったが、渡米当時の日本はブランディングに秀でておらず、日本製品といえばたいてい安価で安っぽく、アメリカの日本に対する印象は非常にネガティブだったという。そして現在、日米の文化相互浸透がいかに進んでいるかを示す興味深い例として、最近公開された両国の観光客誘致キャンペーンの動画を紹介した。美しい日本の自然の中で、笑顔で多様なアクティビティーを楽しむ外国人が数多く登場し、西欧、特にアメリカ的な印象を与える日本政府観光局(JNTO)の「Enjoy my Japan」に対し、アメリカ・オレゴン州の「Travel Oregon」はスタジオジブリや宮崎駿のテイストを多分に感じさせる日本的なアニメーションであると解説。両国が「文化的に影響し合っている」とした。 近年はとりわけ訪日外国人観光客が急増し、2017年には前年比19.3%増の約2,869万人が日本を訪れた。世界から多くの関心が寄せられているこの国の文化の強みは、主に4つの要素で構成されるとケルツ氏は指摘する。

1. 浮世絵からアニメに至るまで―日本の美学とは

一つ目は二次元的・超平面的な視覚的美学だ。葛飾北斎作「富岳三十六景 神奈川沖浪裏」や「蛸と海女」に代表される浮世絵は、線のみのシンプルな描画ながらも、時に力強く時に刺激的・官能的で、背景まで実にきめ細やかに描かれている。ハローキティやピカチュウといった有名キャラクターから広告チラシに至るまで、日本で平面的視覚アプローチを目にしない日はないとケルツ氏は語った。

2. 日本のトイレは職人技の結晶?—日本のものづくり

二つ目は、職人技・ものづくりである。ケルツ氏の友人で、『ジャパンタイムズ』や『ワシントン・ポスト』に記事を寄稿している庄司かおり氏が語ったところによると、「日本は長きにわたって、貧困、食糧難、そして非常に限られた空間をやりくりせねばならなかったので、絶えず革新的に創意工夫を凝らすことを学んできた」という。ケルツ氏の渡米当時は「安価でお粗末」との評価を受けていた日本製品。革新と創意工夫を重ねた結果、「高級で丁寧なつくり」で世界から高い評価を受けているとし、その代表例は日本製のトイレであるとケルツ氏が冗談交じりに言うと、会場からは笑いが起きた。

3. 家と職場で別人になる日本人—日本人のアイデンティティーとは

三つ目は、「フィールド・アイデンティティー」。ケルツ氏は、国内外で高い評価を受ける日本人作家・村上春樹と日本の偉大な心理学者・河合隼雄との対談を著した『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』を取り上げ、この概念を説明した。すなわち日本人は、ファミリーにアイデンティティーを見いだすファミリー・エゴや個人主義と異なり、職場や家庭など、その場その場のフィールドをアイデンティティーの基礎にして都度うまくやっていく性質を持っているという。ケルツ氏はこの概念において「自己は旅をする」ものだと例えた。

4. 「和を以って尊しとなす」—世界基準の調和という概念

最後は「和」、つまり調和である。ケルツ氏は、日本文化とは「調和を優先し、破壊や対立を避ける文化」であり、「調和は混沌や対立を超えたもの」であると説明。収入と支出を明確化する家計簿や、ケルツ氏が「外国のスーパースター」と評する近藤麻理恵(通称こんまり)氏の収納・整理術も、混沌に調和をもたらす「和」の一例であると紹介した。さらに、「和」は「21世紀に非常にふさわしく、日本国外の人を多く引きつけるコンセプト」であり、地球の持続可能性や環境保全を考えるとき、「和」を大切に、絶えず創意工夫を重ねてきた日本の姿勢に見習うべきところはたくさんあると熱く語った。

アーカイブス一覧

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